関東1都7県では新人戦の最高位となる、ノーブルホームカップ第26回関東学童秋季大会。それぞれ予選を制してきた都県代表のチャンピオンシップのトーナメント1回戦4試合を、写真ダイジェストとともに特筆したいヒーローや指導者をお届けしていこう。第1試合は9人が役割を全うした栃木代表が、理想的な内容で勝利している。
※記録は編集部
(取材&文=大久保克哉)
■1回戦/第1試合
四番が3安打4打点の大仕事
◇11月23日 ◇茨城・水戸
甲斐JBC(山梨)
000000=0
30100X=4
阿久津スポーツ(栃木)
【甲】岡田、豊泉-志澤泉
【阿】栗林、二ノ宮-丸山
三塁打/湯浅(阿)
二塁打/湯浅(阿)
【評】双方のスタメンに下級生が2人ずつというオープニングゲームは、ミスの少ない引き締まった内容だった。軍配は、エースが抑えて四番が打った、阿久津に。先発の栗林海斗は立ち上がりの一死三塁のピンチを切り抜けると、4回まで2安打無失点と流れを呼んだ。打線は四番・湯浅朝陽の左中間三塁打とスクイズで初回に3点を先取し、3回には2安打で4対0に。バントの精度がとりわけ高かった。一方の甲斐はなかなか打線がつながらず、本塁が遠かったが、守備は鍛えられていた。相手の再三のバントをほぼ確実に処理して内野安打は1本に。三塁手の3年生・志澤侶南のフットワークと強肩、先発した右腕・岡田蒼生の整ったフォームも目を引いた。
甲斐は1回表、二番・池田爽八が中前打(上)から二盗とボークで三進も、無得点。先発の岡田(下)は最速97㎞
阿久津は1回裏、四球と連続バント(安打1)から四番・湯浅が2点三塁打(上)で先制。続く川尻一太主将がスクイズを決めて3対0に(下)
阿久津のエース・栗林(上)は4回2安打、四球と失点ゼロとゲームメイク。打線は5つのバントを決めた。写真下は2打席連続バントに中前打も放った三番・丸山智暉
甲斐は堅守の三塁手・志澤侶(3年)が3回に左前打(上)。6回には池田が2安打目、三番・豊泉隆大(下)も中前打でようやく連打も、後続が倒れた
阿久津は選手たちで守備のタイムも(上)。二番手の二ノ宮(下)も得点を許さず、完封リレー
―Pickup Hero―
あっぱれ4年生、万能のリトル戦士
ひらやま・こうや平山皓哉
[阿久津4年/右翼手]
「関東大会では、いっぱいライトゴロを決めたり、フライも捕って、勝利に導きたいです」
約1カ月前、栃木大会を制したときの決意を、関東1回戦で現実のものとした。
4点リードで迎えた最終6回表、相手打線は3巡目で一番からの攻撃だった。右翼を守る平山皓哉は冷静にライトゴロを決めて先頭を斬り、流れを渡さなかった。続いて二塁手後方への小飛球はダイブも及ばす、ヒットに。それでも二番手の二ノ宮直之が、その後のピンチでも打たせて取り、チームは完封で初戦を突破した。
「50m走のタイム? 8.6秒とかです」と語る平山は、身長は140㎝にも満たない4年生だが、実にすばしこくて巧み。左打席から三塁線へバントを転がし、トップスピードへ加速していくときの駆ける様がまた美しい。
「二番打者だから、ランナーがいないときは塁に出ることを意識して、追い込まれたら粘ります」
そう、機敏で守備もバントも巧いが、それだけに終始しないのが、平山の特筆すべきところ。打撃フォームが自然体でシンプルなので崩れることがなく、上級生の速球にも食らいつけるのだ。
この1回戦では3回の第2打席に先頭で右前打(=下写真)を放った後に、4点目のホームを踏んでいる。翌日の準決勝では、逆方向へクリーンヒットを1本。続く決勝は最後の打者となって「悔しかった」と涙することになるが、可能性しか感じない。何とも楽しみなリトルプレーヤーが、秋の大舞台で確かな爪跡を遺した。